TALKING ABOUT ARCHIVES Vol.15

小木“POGGY”基史が読み解く、アーカイブとファッションの関係 vol.01 feat. 尾花大輔(N.HOOLYWOOD)

 モードからストリートまで、現在のファッションとは切り離せない存在である”アーカイブ”。”アーカイブ”という存在がブランドのクリエイションにどのような影響を与えているのか、小木”POGGY”基史氏が対談形式で読み解く新企画。第一回目のゲストは、来年でブランドスタート20年目を迎える、N.HOOLYWOODのデザイナーである尾花大輔氏との対談をお届け致します。

尾花大輔氏私物の古着

--- 先ずは本日尾花さんにお持ち頂いた古着についてそれぞれ伺っていきたいのですが。

尾花「このラックが二段になったみたいなのがこの部屋の二倍くらいのところにビッチリと入っていてそこに古着がビッシリになっていているんだけど、普段から必ずシーズン毎に服を作りだす前にどうしても一回手に取るアイテム、何も考えないでも着るやつ、昔凄い世話になったやつっていう感じの三本立てみたいな感じでピックアップしました」

--- その、古着が詰まっている部屋にある古着というのは、頻繁に入れ替わりがあったりするのでしょうか?

尾花「元々、僕は古着屋で働いていたんだけど、ダメな古着屋さんて、良いヴィンテージを袋にかけて壁の上に掛けていたりとか、売りものなのに焼けるからって袋を全部にかけてたりとか… あれがもう大っ嫌いで。まぁそういうような古着屋で働いてたんだけどね。僕はコレクターじゃないから、自分にとって必要でなくなったりしたら、人が思う値段よりも徹底して安くして手放すってことを、昔からしていて。小木くんは知ってると思うけど、フリーマーケットでも大体1,000円で売ったり」

POGGY「そうですね(笑)。凄いものが1,000円で売られていたりして」

尾花「そうやって、バーンと売ってはまた買ってみたいな感じで。売るときは、誰もがこれだけ安いならノリで欲しいなって思えるような値段で。ファッションてある程度ノリで欲しいなみたいなのが無いと盛り上がらないじゃん。かと言って、シカゴみたいな在庫の多い古着屋ほどエディットする訳でも無いし、挙げ句の果てには古着じゃ無い、これって何に使うんだろう? みたいな縫製された不思議なものとかを集めて、サンプルで使っていたりして、一杯溜まってるんですよ。そういうのって売れないから、1,000円とかでバッと売っちゃう」

--- 成る程ですね。そういうサイクルの中でも、今日お持ちのアイテムはずっと手放さずにお持ちのアイテムばかりということですね。

尾花「そうだね。売らずにずっと持っているもので、実際自分の中で基本になるようなアイテムですね」

尾花大輔氏私物の古着(G-1)

尾花「海軍が大好きなのでG-1自体はいっぱい持ってるんだけど、やっぱりこれの面白いところはサイズがUSの52っていうところですね。想像出来ないデカさじゃ無いですか。どういうグレーディングをしているのかなって思ったら、要はデブ用で、身長が高い人用って訳じゃ無いから、着丈はさほどじゃなくてワイドは大きいから、デカい人でもこれなら着るなって思えるゆとり感だと思うんですよ。このサイズ感の古着を見たのが初めてだったのと、後は実際に海軍がG-1の正式採用を終わらせた後のモデルで、軍人さんたちのやっぱりあれは名品だから復刻してくれよって言う声に応えて復刻した後のやつなんですよ。タグをみると86年のってのが分かるんですけど。軍モノって、ミルスペックとして全てが管理されているから、非常に男のスペック心をくすぐるんですよね。例えば、このUSNのパンチングが逆に入ってるとか下の方に入ってるとかっていうのも、全部年式によって異なるし、色んなディテールがあるので。今回は敢えて古いやつじゃなくて、一番新しく手に入れた気に入ってるやつを持ってきました」

(試着タイム)

POGGY「本当ですね!」

尾花「ヤバイよね。例えばAVIREXとかから90年代に出してたようなフォルム感になるんだよね」

POGGY「そういう目線も面白いですよね。僕もNEXUSVIIの今野くんからCHAMPIONのリバースウィーブのジップパーカーの2XLを買ったんですけど、丈が長くて、着ると面白いんですよね」

尾花「面白いよね。俺は唯一コレクションしてるのはリバースウィーブとダウンジャケットなんだけど、今日は持って来なかったんだよね」

POGGY「また別の機会でリバースウィーブも是非(笑)」

--- そうやってサイズ感で全然違うことで新鮮に見えるというのは、とてもファッション的だし、面白いですよね。

POGGY「それに、そういうものの方が安かったりしますよね」

尾花「勿論アメリカでも、どうして良いか分からないサイズ感だからね。でも、昨今のなんでもユルければ良いみたいなトレンドもあるから、前よりは大きいサイズも高くなってきてるんだよね」

尾花大輔氏私物の古着(WEP)

尾花「このWEPも海軍のアイテムなんだけど、やっぱりMA-1とかと比べても好きなんだよね。今日着てるジャケットも元々海軍のアイテムなんだけど、フライトウェアをなんでわざわざこういう作りにしてるのかってのが面白くて」

尾花大輔氏私物の古着

尾花「大きく分けると初期中期後期ってあるんだけど、何故か俺は全部後期が好きなんだよね。気付けば。車も機械も、ど頭の1stモデルか、一番最終形みたいのが好きかな。一番最初と最後で、マイナーチェンジを繰り返すことで全然違くなっていてさ。着易くもなってるし、後期の方が丸みがあって良いんだよね。ふわっとしてて。自分のブランドも来年で20年なんですけど、その間にWEPインスパイアで作った物って沢山ありますね」

尾花大輔氏私物の古着(Calvin Kleinの肌着) 尾花大輔氏私物の古着(Calvin Kleinの肌着)

尾花「Calvin Kleinの肌着は凄い好きで。めちゃくちゃ古いやつとか全然形が違うんですよ。80年代のやつとか。それはただのコレクション自慢みたいに見えちゃうから、自分の中でフォルムが一番良かった年代のやつを2種類持ってきました。一つは色違いも」

--- 尾花さんにとって、いつくらいのものが良かったんですか?

尾花「意外と良いのが10年くらい前のやつで、もう一つのはまだMade In USAのやつ。微妙にタグ違いのやつとかもあるんだけど、その中でもこれは好きで着てたね。最近はもう着なくなっちゃったけど。古着とは違うけど、TARGETとか、無くなっちゃったけどSEARSとか、そういうストアー系のブランドのTシャツは、アメリカに行くと必ず一度はチェックしに行って、新しいパッケージになってたら一応買って、着心地とかチェックしてます。うちは肌着も大切にしているから、アンダーウェアとかTシャツとかも凄い買う」

--- 最初に肌着をブランドの商品として作ろうと思った切っ掛けはなんだったんですか?

尾花「だいぶぼやっとしてるんだけど、ボロボロのジーンズに肌着をヨレヨレで着たら格好良いよねみたいな、そういうノリで着てたんだと思うんだよね。アメリカに古着を仕入れに行くと、肌着コーナーとかはあまり買わない訳よ。だけど、サイズ違いだったり、形が変わったやつ、サーマルだったりとかは、とにかくタグを見てるだけでもワクワクするから凄い買ってて。そんな中で、これなら作った方が良くね? みたいな感じで、サイズもXXSからXXLまで用意して全部作ったのかな。さっきのG-1じゃないけど、身体に合わせるっていうか、その日の気分でサイズを楽しもうってことで、そういうサイズの考え方みたいなのがコンセプトで始めたのかな。でも、もはや自分のライフワークとして肌着を買い続けてるっていうのはあるかな、新品も古着も含めて。で、Calvin Kleinには教わることがいっぱいあったなって思うんだよね」

尾花大輔氏

--- それは、単純に着心地とかシルエットとかそういう話ですか?

尾花「そうだね。あと、こういう肌着をファッションにちゃんと広告で変えていってくれたのって、Calvin Kleinじゃない」

POGGY「そうですね、カメラマンにBruce Weberを起用したり」

尾花「そう。初期のKate MossとMark Wahlbergが二人で写ってる写真とか凄い良いよね。ちょっとセクシーで。だから好きなのかな。他のブランドのだと野暮ったいのが多いから。肌着メーカーじゃないからなのかもね。ファッションブランドが肌着を全面に打ち出したパイオニアみたいなところに、魅力を感じますね」

POGGY「今でも必ずCalvin Kleinの肌着は買ってるんですか?」

尾花「現行のも買ってるよ」

尾花大輔氏私物の古着(Lee) 尾花大輔氏私物の古着(Lee)

尾花「これはどちらもLeeのアイテムで、Leeとは20年くらい仕事をしてるんですけど、Leeをやめられない理由として、Levi’sには無い、ペインターがあると思うんだよね。実際70年代のものとかであるけど、本当のワークとしてのっていうのはLeeにしかないし、よく穿いてて、最終的にここまで来ちゃった。で、実際に穿いてるのを見て、うちの人たちが商品化して欲しいっていうから、商品化までしちゃったんですよね」

尾花大輔氏、小木Poggy基史氏

POGGY「だから見覚えがあるんですね。このシルバーのテープは普通に貼ってたんですか?」

尾花「そうそう。海外に行くと、バミテからダクトテープとか、面白いものがあるといつも買っちゃうの。テープってなんか良いんだよね。インスタントで。ステッカーだと主張が強いから、テープを。もう一本のツナギは軍モノなんだけど、Leeが唯一軍事産業に関わったのがツナギなんです」

POGGY「これもLeeが作ってるんですね!」

尾花「そう、H.D. Lee Companyって、創業者のイニシャルがまだブランド名に付いてる頃のアイテムで。これはまだARMYとAIR FORCEが一緒にやってた頃のツナギですね。ここからどんどんアップデートされていくんだけど、普通のズボンにはこんだけ色々なディテールが付いてないじゃん、6ポケットだって。でもツナギって予想もしていないような不思議なディテールが死ぬほどあるから、凄く好きで。あと、このホワイトのテープってのがなんか良くない?」

POGGY「良いですね〜」

尾花「もっと古い、ウールで作ってる時代のツナギも持ってるんだけどね。ツナギは、上だけをディテールに使ったりとか、下だけを使ったりとか、色んなディテールサンプルでも使うし、自分でも着るし」

--- 今でも、尾花さんが見たことのないディテールのツナギとかに出会うことってあるんですか?

尾花「あるある。あるし、今多分ヴィンテージ系の古着屋さんで働いてる人って、もう僕らより更に計り知れないくらい、時系軸合わせて話してくるし、詳しい人が多いと思う。それは知らなかったなみたいなことがいっぱい出てくる」

POGGY「ミリタリーだとテストサンプルとかもあるから、本当に色々ありますよね」

尾花「そう。しかも、テストサンプルの判断の仕方は、これくらい古いとテストサンプルですよっていうタグが付くんだけど、ベトナム戦争くらいの時期のアイテムになると、工場で測るしかなくなってくるから。タグに、DLA、DSAって入ってたら通常のラインだけど、DESCになるとテストサンプルの工場のライン、とかっていう風に判断したり」

POGGY「そういう判断の仕方を最初に見つけた人って誰なんですかね? 凄いですよね(笑)」

尾花「軍のモノが好きな人たちのイベントとかがあるんだよね。そういうイベントに行くと、情報交換が凄いのよ。渋谷のサンタモニカの地下に、軍モノとブルースリーのマニアがやってるお店があって、そこの人に昔教わったかな、そういうの」

POGGY「目黒にも有名なお店がありましたよね。もう無いんだと思うんですけど。軍モノって色々ありますけど、どの国の服が好きとかってあります?」

尾花「USは確かに、追求していっちゃったからある程度みえちゃったので、最近は初心者みたいに、ヨーロッパ系の軍物並べて、自分で調べながらやってるかな。でも、なんとなくやっぱり、ヨーロッパでも先をいってたって意味では、イギリス軍のものが好きかな。手にとってきになるやつはイギリス軍のものが多いんだよね。ロンドンにあるウェアハウスによく行くんだけど、Stone Islandのデザイナーとか、Nigel Cabournさんとかがよく来るところみたいで。そこで色々見せてもらうと、他のヨーロッパの国、オランダとかよりも分かりやすくスペック感があってて、最近はその辺りが気になってますね」

尾花大輔氏私物の古着 尾花大輔氏私物の古着

尾花「ほんとは白いアイテムを全部持って来たかったんだけど。人並みだけどモッズパーカーみたいなのは好きなのと、こういう軍モノでも白いモノはやたら惹かれちゃうんだよね。何かあると買っちゃう。これもいわゆるオーバーコートで、モッズパーカーみたいな形はしてるけど、モッズパーカーの役目というより、ケミカルプロダクト系。このパンツもオーバーパンツだし。こういう白い軍モノって、USEDは絶対にピンクの染みみたいなのが付いてるんだよね。識別で何かをピッてやってるのかな〜?」

POGGY「これくらい汚れると逆にまた良いですね」

尾花「こういうのは若い子が着てると美しいんだけどさ」

POGGY「そうですね(笑)」

尾花「僕らが着てるとね(笑)」

POGGY「これは何軍のアイテムなんですか?」

尾花「これは米軍だね。タグを見るかぎり、ちゃんとモッズパーカーの系譜は辿ってるアイテムですね。冬季用ってことで、雪山とかだと白ってカモフラージュの役割を果たすから、山岳部隊の着るジャケットとかってリバーシブルになってて、裏面はカモフラージュする為に白になってたり。あとは、化学薬品を扱うような人たちが着るので白ってのも多いかな」

小木Poggy基史氏

POGGY「ファッションの専門学校とかでもこういう講義があったら良いですよね。2000年代初頭のジョニオさん(UNDERCOVER)とか宮下さん(現TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.、当時NUMBER (N)INE)以降、コレクションの服の作り方が音楽的な作り方になったと思ってまして。自分の好きなミュージシャンが着てる古着をモチーフにそれをアップデートしてとか。いま世界的に注目されている多くのメンズデザイナーのやり方ってその延長線上にあると思うんですが、尾花さんのやり方って服そのものとしてミリタリーの歴史を理解した上で、この年代のこれと、その年代のアレを組み合わせたら面白いことになるんじゃないかっていうやり方じゃないですか。そういうことも、デザインにとって大切なことだなって思うんですよね」

尾花「自分がブランドを始めたときって、リメイクアイテムから始めてるから、全然何も分かってなくて。あるときお店に、ここマルジェラのパクリなの? って言って入って来たお客さんがいて。けど、古着でずっと生きて来たから、裏原も知らなかったし、マルジェラも知らなかったの。でも、気になってマルジェラの恵比寿のお店に行ってみたら、ホントにゾッとしちゃって。それがお店をオープンさせて1年くらい経った頃だから、余りにも知らないっていうのはヤバいんだなって、凄い怖くなっちゃった記憶がある。そのタイミングで、構築的なリメイクとかはシビアに向き合うようになったのかな。マルジェラさんてお幾つなんだろうな。50中ぐらいとかかな? 同じような時代を過ごしてるんだと思うんだよね。自分はフルクサスとかダダイズムとか、ああいうカルチャーも好きなので、マルジェラの洋服の作り方っていうのは、そこら辺のアートシーンをチェックしていれば当然だし、後になって考えれば、作り方が被って当然だったのも分かったから良かったんだけど」

尾花大輔氏、小木Poggy基史氏

尾花「確かに、俺は意外と服と対話してずっとやって来た方かもしれないね。でもここ3年くらいは、古着を最初に見てから服を作るっていう流れではなく、もっとフォルムだったり、デザインを、実際には無いものだったり、自分の中で色々と噛み砕いたものだったりという、オリジナルなものという形で出したいという気持ちが凄い強くて。どうしても最後の決め手が思いつかないなーっていう状態の時に、これだったら色はこういう色にしようとか、最後の手助けをしてもらうのが古着っていう感じで、プロセスが逆になって。古着との向き合い方が真逆になったんだよね。最後に悩んだときに、助けてもらうっていう感じになった」

--- ここ3年くらいでそういうスタンスに変わったというのは、何か切っ掛けがあったんですか?

尾花「NYでランウェイを10年やってると、もっと雰囲気でコレクションを作ってる人もいるし、そんな立派な理由もないけど形になってる人もいたりするのを見るじゃないですか。でも、結局良ければ良いじゃんていうことにも凄い気付かされて。当然その、ストリートだったりカルチャーから生まれていることから服を作っている人たちとは全然別のシーンで考えて、デザインという意味でね。僕がやってることって、7、8年くらい前までは、テーマを例えば”ウェスタン”ですって決めて、ウェスタンの役者でこういう人がいるから、その人へのオマージュとしてこうしました、こういうの着てましたよね! だからこうしたんですよ、みたいに、全員が共有し易いんだけど、それって格好良いのかなって思っちゃって。例えば、小木君の今のカジュアルとかって何カジだか定義出来ないじゃん。昔の渋カジとかは、こういうのってハッキリ決まってたけど。今のミクスチャーの最上バージョンで、いろんな国の服を合わせるし、スーツもやって来てるからそういうルールも分かってる訳じゃん。ポイントは押さえつつもかなりミックスになる。じゃあ、それを自分にとってのデザインに置き換えるとしたら、自分が色んな旅に出て見たもの、食でも壁でもなんでも良いから、そういう物を見たことからこうなったって言ったら、もう僕が体験したことだから僕以外には分からないし、僕の一からのオリジナルになるのかなって。そっちの方が発表したときに、自分の中で凄いスッキリするんだよね。自分の好きな形にはめ込めるし。それもあって、テーマ名をこの5年くらい付けないようになったんだよね」

--- その時々で蓄積されたこと、表現したいなというものを素直に出しているということですね。

尾花「そうだね。ミックスして出して、でもある程度芯がブレないように、その国に行ったら何が一番印象が強かったかな? みたいなところを主軸にしながら。当然、モノも人も渡り歩く時代でしょ? だから、先週までドイツに行ってたけど、そこにはアメリカのものも日本のものもあったし。そこのミックス感みたいなのを否定しないで、どんどん入れる。そういうことを最近はデザインとしてやってるかな」

POGGY「そのデザイナーの人が好きなものが伝わる方が強い時代って感じがしますよね」

尾花「そうだね。パーソナリティーが要求されるし、その人のアイデンティティーが要求されるよね。僕はどちらかというとカルチャーが一番前に出るっていうよりも、こういうものからインスパイアされたっていうやり方だから、最終的にデザインされたもの中心での売り方にはなるんだろうな」

POGGY「昔のRaf SimonsだったりHelmut Langとかも、徹底的に研究して、ちゃんと作り上げてるから今でも残っているんだと思うんですよね。だからN.HOOLYWOODも10年後や20年後にそういう存在として残っているかもしれないですから、楽しみですよね」

尾花大輔氏

POGGY「最後に、尾花さんがこれは買っておけば良かったとか、手放して後悔しているアイテムなどはありますか?」

尾花「手放して後悔してるのは、昔、町田の軍モノマニアみたいなおっさんが、まだ家の電話しか無い時代に、一ヶ月間毎日実家に電話して来たことがあって。尾花くん、あれ売ってくれないかな? って。実家の母親とかも心配して来て、あなたもう売ってあげた方が良いわよって言い出して(笑)。B-15Cの茶色ボアなんだけど、何故かARMY AIR FORCEの白抜きのスタンプが押されて、裏地が真っ赤っていうやつだったね。あれは後にも先にも見ないな。それは仕方がなく売ったんだよね。でも、思い入れを強くしないようにしようってのは、古着屋を始めたときから決めてた。仕入れたけど売りたく無いから高い値段つけてずっと店に置いとくみたいなのが、みっともないなって思ってたから。とにかく余りコレクター意識もないし、売って損したなとか、売らなきゃ良かったなって感じることも無いかな。最近は逆に更に断捨離してる。服ってある程度着て、自分の旬が終わったときに、手放して次に行くっていうのが良いと思うんだよね。思い入れがあるっていうのは凄く素敵なことなんだけど、洋服なんて流れていって良いのかなって。循環した方が次の出会いがあると思う」

尾花 大輔

「N.HOOLYWOOD」デザイナー
1974年1月28日生まれ、神奈川県出身。ファッションの専門学校を中退後、古着屋でショップマネジャーやバイヤーを務める。1995年にオープンした古着店「ゴーゲッター」の立ち上げに参加し、2000年に独立してミスターハリウッドを設立。2001年にメンズブランド「N.HOOLYWOOD」を立ち上げて本格的にコレクションをスタートした。2010年からはニューヨークでコレクションを発表している。

小木“POGGY”基史

1976年生まれ。1997年に「UNITED ARROWS」でアルバイトを始め、プレス職を経て2006年に「Liquor,woman&tears」をオープン。2010年には「UNITED ARROWS & SONS」を立ち上げ、ディレクションを手がけている。2018年に独立し、昨年リニューアルオープンした渋谷PARCO内の「2G」のファッションディレクターを務めるなど、新たな動きにも注目が集まっている。

Photo_ Shiga Shunsuke
Text_ Maruro Yamashita

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