Talking about “So cool Japan” Exhibition

日本の古着が持つ力

POGGY氏がファッションディレクターを務める、渋谷PARCOの2G。NANZUKAによるギャラリー、MEDICOM TOYによるアートトイ、そしてファッション、と3つのジャンルが集結し東京から世界に発信するカルチャーの新名所である2Gにて、“So cool Japan”展が6月26日(金)よりスタート。その内容は、以前にもOR NOTでPOGGY氏と対談を行ってくれたc30の権守氏が、様々な場所でのPop upを中心に活動する古着屋であるweberとタッグを組み、日本の古着が持つポテンシャルに改めて光を当てる内容だという。今回は、POGGY氏、c30の権守氏、weberの池田氏と畠中氏の4名にzoom上に集まって頂き、出品されるアイテムの一部を見ながら、改めて“So cool Japan”展について話を聞いた。

--- 先ず、今回の“So cool Japan”展はどのような経緯で開催されることになったんでしょうか?

POGGY「一番最初は、今年の1月にc30の権守さんから、weberさんとコラボしてPOP UPを考えているんだけど、2Gで興味ありますか? という提案を頂いて。僕は、勿論興味あります! って感じで。そこが発端ですね。僕もweberさんの畠中さんとは、7、8年くらい前から知り合いで。でも畠中さんがやってるってことは知らなかったんですよ。weberのことは前から知ってたんですけど、実際に見たことなかったんで、BEAMS TでPOP UPをやっていたときに見に行ったら、ちょうど池田さんが店頭にいて。実は畠中さんと二人でやってるっていうのを聞いて、あそうなんだ! みたいな」

池田「そうですね、いきなり声をかけたんです(笑)」

--- 権守さんが、weberと一緒にPOP UPをやろうと考えたのはどのような流れだったんですか?

権守「weberには一番初めから買いに行かせて頂いていて、センスが異常に良いなって思ってたんです。で、仲良くなり出して、自分もちょっと変な古着を面白いと思っている方なので、一緒にやったら化学反応が起きて面白いんじゃないかなって。ただそれだけです」

--- 今回は“So cool Japan”という事で、“日本”をテーマに古着をセレクトされていますよね。

権守「90年代の日本のストリートファッションの歴史を世界に伝えて、国内海外問わず、その価値を高めたかったんですよね。今後も当時のような波が起きる事は無いんじゃないかなと思っていて。いまって、世界中が当時の日本のストリートファッションに注目していると思いますし、古着もアーカイブとして凄い人気になっていますけど、正直表面をなぞらえただけで、大事なカルチャーの部分が深掘りされていない気がして。藤原ヒロシさん、高木完さん、JONIOさん、NIGOさん、SK8THINGさんの発信していた当時のカルチャー、そしてその発信の起源となった雑誌連載『LAST ORGY』と時を同じくした物を紹介する事で、当時の熱量を世界に伝えたいなと思いました」

POGGY「コロナの前に皆で会ってたときに、weberさんてわりとクールな路線だけど、B面も好きな方達なので、そういう部分を出したら面白いんじゃないかっていう話がちょっとあって」

池田「“日本”をテーマでという話になったときに、同じような品揃えになっちゃうと面白くないと思って。裏原と呼ばれるカルチャーのものは権守さんの得意分野だと思っていたので、割とそれ以外の部分で、僕らはまだ脚光が当たっていないようなものとかを中心に集めたら面白いのかなっていうのは、漠然と思っていて。で、色々探しながら、こういうのが良いんじゃないかっていう感じで今回の品揃えが出来ているっていう感じですかね。畠中さん、補足あれば」

畠中「いや、もうその通りです」

一同笑

--- いま2Gに送って頂いている荷物以外にも、商材はあるんですか?

POGGY「あります。全部で300点以上くらいあるんで、ここのは一部っていう感じです。3日間で、2Gの一部の棚を全部Tシャツだけにして、店頭のみで販売して、その後はお店に来れない方たちの為に品揃えを変えてwebで売ります」

畠中「色々集まって来ています。今回日本というテーマでセレクトしましたが、一歩間違えちゃうとバラエティーグッズ的な感じになっちゃう部分もあるんで、そこに行かずに、でも格好つけ過ぎずに、っていう絶妙な匙加減が難しかったです。権守さんが裏原ものを集められてるっていうことで、年代は90年代くらいが面白いかなって思っていたんで、90年代に自分が体験したカルチャーの記憶を手繰り寄せながら、色々池田と話し合って集めました。その結果、音楽だったりアートだったり色々と集まって、他はまだどこも手を付けていないんじゃないかなっていう、ギリギリの面白いラインナップになりました」

POGGY「たとえばc30さんはフューチュラ本人がびっくりするくらい、フューチュラやスタッシュ関連の過去のアイテムに目を付けるのが早かったですし。値段を上げようとした訳ではなく、好きだからやったんだと思いますけど、ブルース・ウェーバーのフォトTが今これだけ再燃しているのとかは、weberさんが仕掛たって言い方はアレですけど、目を付けたからだと思うんですよね。FOTOFOLIOのTシャツとかも、あれって90年代当時、普通にセレクトショップとかで扱ってたんですよ。アヴェドンのとか。僕もユナイテッドアローズに入りたての頃に、畳まくってました(笑)」

--- 当時は全くレアなものとかではなく。

POGGY「普通に売ってるものだったんです」

畠中「そうですよね、本当に」

--- 見せ方の編集次第で受け取られ方が変わってくるっていうのも、古着の面白さですね。

POGGY「今コロナ禍で、更に人種差別撤廃の運動もある状況じゃないですか。そんな最中で、LAではショーン・ウェザースプーンのRound Twoがルーター(注:略奪する事が目的の人たち)に襲われてしまったんです。それも凄くショックだったんですけど、NYではKITHとFLIGHT CLUBも襲われていて、拳銃を出したりと、とても危険な状況だったみたいで… ヴァージルがRound Twoが襲われたことに対してのコメントをInstaにあげてたんですけど、ストリートファッションは終わった、自分たちのやり方は正しくなかったのかもしれないっていうようなことを言ってて。Round Twoを例に挙げてコメントしたのは良くなかったとは思いますが、ヴァージルが書いていたことには自分も共感して。ストリートファッションっていうのは仲間たちと一緒に物語を作っていくみたいなものであって、たった一枚のTシャツに込められたストーリーだったり、カルチャーがとても大切なんですよね。スニーカーやストリートウェアを愛している人たちだったら、そういうお店を本来なら守るべきじゃないですか、それを襲って略奪しに行くっていうことは、もう洋服やスニーカーを単なる物としか見ていないっていうことだと思うんですよね。そういうのはただ悲しいというか。もちろん根深い問題はありますが、自分たちがファッションとしてできることの一つとして、こうやって昔の物を通して、“伝える”っていうのは今の状況では地味かもしれませんがとても大切なことだなと思っています」

--- カルチャーにはエデュケーション、先人たちが教えて伝えていくっていう部分が重要ですからね。

POGGY「だから、単に当時の物を見せるだけではなく、こういう説明とかもちゃんとして頂けるっていうのは面白いですよね」

--- このようなアイテムは、皆さん常日頃からディグされてるんですか?

畠中「今回のものに関しては、ほとんどこの企画の為に探しました! 普段集めるときのテーマは自分たちで作っていて、最初からブルース・ウェーバーは好きで集めたり、映画が好きなんで映画ものをずっと集めてやってたりとか、そういう感じでやってるんですけど、全体のラインナップの中に少しは、「これ売れるか分からないけど自分たちは好きだしな」っていう変わったものも意識して混ぜるようにしています(笑)。年代とかも決めずに。結局古着って「〇年代がヴィンテージだ」とか、今だったら90’sとか人気ですけど、僕たちは00年代とか10年代でも面白かったり雰囲気が良ければアリでしょって集めていたものが結構あって、どこかで出すタイミングは待ってたので、そういうのも一部出させて貰いました」

POGGY「面白いものばかりですよね(笑)」

畠中「カヒミカリィはヤバイですよね」

池田「これ、滅茶苦茶格好良いですもんね」

畠中「2Gは渋谷PARCOだし、渋谷っぽいのも良いなって。デザイン的にも、全然今でも着れますよね」

POGGY「これはまさに、今海外の人たちがポストしてるTシャツですよね」

権守「そうなんですね! ブランド創設が90年で、これは91年にリリースされたGOOD ENOUGHです。『グラムg』タグの付く、90年、91年の中でも人種差別を訴えるEND RACISM 1991は、GOOD ENOUGH好きにとって特別な存在だと思います。フロントにプリントされた『グラムg』マークがブランドアイコンになったんですよね。ストリートの始まりを告げる一枚と言っても過言ではないと思います。このデザインは復刻も出ているんですけど、文字淵がガタガタになった『SPECIAL EDITION 4』の文字と、背面プリントの大きさ、ラバー染料の違いが、オリジナルならではのパワーがあると思います」

--- 時事ネタとしても最高なメッセージですよね。“End Racism”って。

畠中「これやっぱ、本物はオーラが凄いですね」

権守「画像で見てもヤバイですよね」

畠中「FUJIROCKのTシャツはまだ古着としての価値は定まっていないかと思いますが、初期のものが面白いの多いんですよね。怒られるんじゃないかっていうレベルでサンプリングしてるグラフィックとかが多くて。2003年くらいまでのが面白くて。まだ色々調べてます」

POGGY「今ではあり得ない出演バンドの並びとかも含めて、面白いですね」

畠中「そうなんですよ!当時の空気感が伝わってきますよね」

POGGY「これはアンダーカバーのONE AND ONLYのやつですよね」

権守「リメイク品含め、少数ロットで生産されていた、アンダーカバーのONE AND ONLYレーベルです。裾にONE AND ONLYタグが付いてて、腕の付け根の所にもリブ切り返しがあるんですよ」

畠中「本当だ。凄いですね!」

権守「NOWHEREが出来たときのアイテムって聞いてるんですけど…」

畠中「初めて見ましたよ」

権守「あ、本当ですか!」

POGGY「このUにアンダーバーのロゴって、スタッシュがデザインしたんですよね? 違いましたっけ?」

権守「え、分かんないです」

畠中「スタッシュも、Sにアンダーバーのデザインありますよね」

POGGY「そうですよね。スタッシュが手がけたか、スタッシュに影響を受けたかのどっちかなんですよね。確認しときますね。バックのデザインもその感じですよね」

POGGY「90年代のガボールとゴローズですよね」

池田「ゴローズは相当珍しいんですよ。1stのやつなんで」

POGGY「1stとかあるんですね!」

畠中「何パターンかあるみたいで。この辺りは好きな方が多いと思いますが、Tシャツは本当に見ないんですよ」

池田「ゴローズのは90年代の初期のもので、Tシャツとして一番最初のものみたいです。ガボールは日本かって言ったら違うんですけどね(笑)。クロムハーツもあったら良かったですね!」

POGGY「これはスケシンさん(SK8THINGさん)デザインなんですか?」

権守「そうなんです。昔、これ着て雑誌にも出られてましたね」

畠中「着てました!」

権守「ですよね〜」

畠中「キャップ被って出てましたよね」

権守「ねー、ねー。今回、あんまり見たことのない90、91とかのスケシンさんが、デビュー作の頃なんですかね、Tシャツ色々見たことないのを用意してて。スケシンさんて、常に進化してるし、今も最前線を走ってるじゃないですか。そんなスケシンさんの仕事の中でも、これはストリートの始まりを告げる一枚だと思うんです。手書きグラフィティーと、パソコンが普及してきた時代背景を感じさせるタイポの組み合わせのデザイン。多くの染料から選び使用したプリント。凡人とは掛け離れたデザイナーだってことを証明する一枚かと」

POGGY「スケシンさんて、GOOD ENOUGHだけじゃなくて、APEも40%(FORTY PERCENT AGAINST RIGHTS)とかも全部最初の頃関わってますよね」

権守「今もそうなんですかね?」

POGGY「今は分からないですけど、初期はスケシンさんがグラフィックを手がけていたものが多かったと聞いてます」

権守「すげ〜! いやー、良いですね」

POGGY「このMILKBOYのは全く知らなかったです」

畠中「これは今回の僕らの中では一押しの一つですね。裏原なんだけど、ちょっと変化球っていうか」

POGGY「ヒロシさんたちの更に先輩ですもんね」

畠中「そうですね、大川さん。あと、ムラジュンさんバージョンがあるんですよ。その3種類みたいで」

権守「右は誰なんですか??」

畠中「左がBOUNTY HUNTERのヒカルさんで、右がヒロシさんです。HIROSHI PLAYING GUITERって書いてありますね」

池田「そのメッセージがまた良いんですよね〜!」

POGGY「写真もちゃんとした人が撮ってそうですよね。でも、全体的な荒さも良いですよね」

権守「今回のイベントではこれは出さないといけないなっていう気がして、宝島の連載『LAST ORGY 2』の終わりを告げるTシャツであり、ストリートの歴史を語るTシャツですね」

POGGY「全員の名前が入ってますもんね」

権守「すべてのLAST ORGYについて語っている気がして。アンケートにも書いたんですけど、NIGOさんがスケシンさんとAPEを始めて間もないからか、肩書きが『NOWHERE』になってるんですよね。W taps、FORTY PERCENT AGAINST RIGHTSのTETZさんは『Stussy Tokyo Chapt』、もちろん藤井フミヤさんの名前も在ります。時代の息吹きを感じますよね。LAST ORGY 2の途中から誌面のデザインを任されたSEVEN STARS DESIGNによるデザインで、仲間と楽しむ姿がストリートのリアルを語ってるような気がします。この企画には欠かせない一枚ですね」

POGGY「森山大道さんのですね」

池田「そうです。97年に山梨のギャラリーで展示を行なった際のTシャツと聞いてます」

畠中「あまり無いよね、森山大道さんのTシャツって」

池田「あまり無いんですよね。タグもまたなんか変なんですよね(笑)」

POGGY「日本のTシャツだと、サイズのシールが付いてるやつとか多いですよね(笑)。いやー滅茶苦茶面白いです。これが一部ですからね、商品の」

一同「いやー、楽しみですね!」

--- 皆さんのレベルでも、なかなかお目にかかれないようなものが揃っているんですね。

畠中「本当にそうですね」

POGGY「GOOD ENOUGHの“END RACISM”のTシャツは、探してる人多いと思います。当時からファッションを通じてメッセージを伝えていたのは凄いですよね」

畠中「これは当時偽物とかも多かったですよね」

POGGY「そうなんですね! 偽物とかって皆さんはどこで区別しているんですか?」

畠中「これに関しては、版の大きさが全然違うんですよ。このTシャツのデカ版は本物ですね。偽物はもっと小さいんですよ」

POGGY「さっきのお店が襲撃されてしまった話では無いんですけど、投資目的でこういうレアなのどう? っていう話じゃ無いんですよ。皆さん、好きっていう気持ちが先に来ていて、結果的に数が無かったり、探す手間がかかったりするんで値段が高いのもあるんですけど、好きっていう気持ちが前提にあるっていうのはやっぱり凄く大切だなって思うんですよね」

--- 皆さん的に、日本の古着が注目を浴びて来てるという実感はありますか?

池田「かなりあると思いますよ。例えばさっき権守さんからご紹介頂いた、裏原系のものって、ヴァージルにしろ海外の方達が皆さん影響を受けていますし。BAPEのアーカイブを海外の某有名ラッパーも探しているという話も聞いたことがあります」

畠中「あと、SUPREMEのクルーが日本に来るとき、古着屋は勿論凄い回るんですけど、神保町に行って日本の雑誌を買いまくっていくって言ってました。やっぱり日本の80年代、90年代って特殊なんじゃないですかね、海外から見ても」

POGGY「詰まってますよね。グラフィティーのカルチャー、スケートのカルチャー、バイクのカルチャーとか、全部が凝縮されていて。あと、Tシャツとかスウェットが本格的にファッションになっていったのもこの時代で。ファッションの裾野を広げたんですよね、多分」

--- 当時はそういったカルチャーが日本に伝わって間もないということもあるかもしれませんが、初期衝動に溢れてるんですかね。

POGGY「そうですね。後、この年代でしか出来ない自由さ、今だと版権取らなくちゃいけなかったりなんだったりっていうのがあるけど、そういう自由な時代が故の面白さってのもありますよね」

権守「そもそも、ヴィンテージという市場も日本人が世界に火を着けたと思うんですけど、今は『日本の古着』に可能性をとても感じますね。日本人含め世界の人が、もっと日本のストリートファッションの本当の価値に気付いて欲しいと思って、今回の“So cool Japan”展を企画させて頂きました」

小木“POGGY”基史

1976年生まれ。1997年に「UNITED ARROWS」でアルバイトを始め、プレス職を経て2006年に「Liquor,woman&tears」をオープン。2010年には「UNITED ARROWS & SONS」を立ち上げ、ディレクションを手がけている。2018年に独立し、昨年リニューアルオープンした渋谷PARCO内の「2G」のファッションディレクターを務めるなど、新たな動きにも注目が集まっている。

権守 健一

ヴィンテージ、Hip Hopをはじめとする様々な音楽、そして裏原のカルチャーと多岐に渡るバックグラウンドを持つ。BOW WOWディレクターと、King Of Diggin’ことMURO氏の新ブランドRECOGNIZEサポートメンバー。BOW WOWのヘッドショップ、ヴィンテージショップとして原宿に居を構えるC30は先日1周年を迎え、新たにRECOGNIZEのヘッドショップとしても始動する。

池田 仁

ノマドな古着屋weber 主宰

畠中 一樹

ノマドな古着屋weber 参謀

Text_ Maruro Yamashita


RELATED ARTICLES