INTERVIEW WITH KOMEHYO

日本最大級のリユースデパートKOMEHYOによるアップサイクル

国内のリユース市場は、2025年には3兆円規模にまで拡大することが予想されている。コロナ渦をも追い風にし「巣ごもり消費」や「息抜き出品」などEコマースでの売り買いも増加傾向にあり、利用者の裾野も広がり続けている。ますます存在感を強める二次流通は、一次流通の在り方にどのような影響を及ぼすのだろうか。

SNSによるイメージの流通量もここ数年で加速度的に増えている。モノ作りよりも先に話題作りを優先したブランドが後を絶たないが、未だ客観的な物差しが存在しない現象に対しても同様のアプローチが繰り返されている。飽き性を人の性だとするならば、それらの取り組み自体がどこまで持続可能かを考える必要があるのではないだろうか?

1947年、古着屋「米兵商店」を名古屋市中区に出店して以来、70年以上にわたりサスティナブルへの考え方を社是としているコメ兵ホールディングス。戦後まもなく貧困が社会を覆った時代に衣類の行商で開業資金を得たという。今では、国内最大級の商品点数を保有するだけにとどまらず、リユースとテクノロジーを掛け合わせた技術開発を行い、フリマアプリやAI鑑定を運用するなどリユース業界に変革をもたらし続けている。今回のインタビューでは、そんなコメ兵の中でも特にファッションの分野で新しい取り組みを続けているKOMEHYO SHINJUKUについて、商品部ファッショングループの安蒜さんにお話を伺った

KOMEHYO

ここ最近、ファッション・アーカイヴを販売するお店が急増しています。コメ兵さんがポップアップストアを開催される際に重要視しているポイントを教えてください。

質はもちろんですが、量も重要なポイントですね。自分たちが納得できる質と量が揃ったタイミングでポップアップストアを開催しています。「HERMES MARGIELA POPUP STORE」に関しては、約400点ほどアイテムを集めてから開催しましたし、「CÉLINE ARCHIVE PHOEBE PHILO」を行った際にも約300点ほどピックアップしました。また、アイテムの値付けは、適正な相場を維持する上でも大切ですね。

KOMEHYO KOMEHYO

バイイングされる際に意識されていることはありますか?

HERMESとCHANELのように、クラフトマンシップに則って作られた良質なデザインの衣服は常に探していきたいですね。その他には、今の風潮的に作ることが難しいアイテムに関しても意識しています。例えば、シルク素材の総柄シャツやミンクやファーのコートなど、今後大々的に発表される機会の少ないことが予想されるアイテムです。それらをファッションの歴史、背景を含めてどのように伝えていくべきなのかも考えていく必要がありますね。

KOMEHYO

二次流通における価値基準が、一次流通の在り方に影響を及ぼし始めています。その流れからか一次流通側が古着を扱い始めるなど垣根を超える動きも徐々に増えてきました。このような現状の中で二次流通の独自性や強みはどのような部分にあるとお考えでしょうか。

二次流通というと、いまだに質屋やリサイクルショップといった少し古めかしいイメージがあると思うのですが、私たちは市場自体のブランディングを高めていきたいと思っています。その中でも特に一次流通では表現が難しい部分を考えたいですね。例えば、一次流通におけるブランド同士のバッティングなどが理由で取扱いできない組み合わせも、私たちの業界では表現できる余地があると考えています。また新しい技術へのアプローチや独自の企画も必要ですね。

KOMEHYO

実際に新しいテクノロジーの開発もされていますね。

私たちが「リユーステック」と呼んでいる概念にも繋がる部分です。リユースとテクノロジーの新しいかたちを常に探し続けています。新たに開発された技術を活用することよって、健全なリユース市場を創造し、サスティナブルな社会の実現を目指しています。

中でも「AI真贋」の開発には驚きました。

コメ兵には、AIの開発に最適な条件が揃っていました。年間で約160万点にも及ぶ商品点数は、AIの精度を上げるための膨大なデータとして活かすことができましたし、これまで培ってきた鑑定士の技術を通じてAIのレベルは常に向上しています。鑑定士の知識をAIに引き継ぐことで、鑑定力という財産を業界に残していきたいですね。

KOMEHYO

KOMEHYOの鑑定力はフリマアプリ「KANTE」にも活かされています。CtoCまで視野に入れた動きですが、どのような意図があったのでしょうか。

通常のCtoCですと、どうしても偽物が入り込んでいる可能性があるのでトラブルの原因になりやすいのです。私たちのサービスは、購入者が希望した場合に熟練の鑑定士が一点一点商品をきちんと判定してからお届けするするという流れですので、その後のトラブルは限りなくゼロに近いです。アフターサービスも大切ですが、ビフォアサービスも同じくらい大切ですね。

サスティナブルに関する取り組みも他とは異なるアプローチをされていますね。例えば、KOMEHYO AOYAMAではリユース建材を活用した店舗設計となっています。

KOMEHYO AOYAMAでは、スケルトン部分を除く内装面積の98%に、リユース建材や環境に配慮した素材を活用しています。また、店内にはディスプレイ用の商品以外の在庫を置いていません。あえて在庫を置かずに、KOMEHYOオンラインで選んだ商品を取り寄せて、実際にご覧になっていただいてから購入できる仕組みです。オンライン上での豊富な商品点数と店舗接客を掛け合わせることで新たな販売スタイルを目指しています。

KOMEHYO SHINJUKUでも独自のプロジェクトをされていますね。最近では、ヴィンテージシューズをよみがえらせる試みとして「オールドシューズ レストアプロジェクト」が開催されました。

「レストア」とは「元通りにする」という意味です。今までコンディションの問題で買取りができなかった靴を買取り、修復することで、廃棄される靴を減らすことができます。またその際、商品を右から左に流すのではなく、フルソールの交換やレザーの細かいケアなど、一足ごとにベストな状態を心がけることで新たな価値観を提供していきたいですね。

KOMEHYO

その他にもKOMEHYO SHINJUKU発のプロジェクトとして、ファッションブランドと共にマスクを制作されていますね。

店舗での販売が難しくなった古着などを何かしらの形で活用できないかとずっと考えていました。このコロナ渦というタイミングとサスティナブルへの思いを共にするCOTEMERさんとマスクを作ることに決めました。デニムやネルシャツ、ミリタリーといったアイテムからコメ兵が保有するデッドストックのスーツ生地をベースに再構築したマスクを制作しました。KOMEHYO SHINJUKUは、KOMEHYOの中でもファッションに特化した店舗です。どちらも1Fにはイベントフロアを設けており、随時ポップアップを開催しています。

ジュエリーに関しては、オリジナルのブランドがありますね。

デザインはオリジナルなのですが一から素材を集めて製造するのではなく、買取りしたジュエリーの素材を再利用したリメイクジュエリーです。品質は良いけれどデザインが古く使われなくなったジュエリーが、魅力的な新しい商品に生まれ変わります。リングパーツの加工や石の整型は全て職人さんの手作業なのも特徴です。今の時代感にフィットしていないというだけで、家に眠らせておくのはもったいないですよね。それらをまた循環の輪に戻していくのも私たちの使命だと思っています。

KOMEHYO
BEFORE
KOMEHYO
AFTER

技術開発から運用、サスティナブルへのお取り組み、一次流通との協業など、独自の事業を展開されているコメ兵さんですが、それらのプロジェクトの全てに共通するコンセプトとはどのようなものなのでしょうか?

お客様が不要になった品物を必要な方へと繋げるのが私たちの責務です。品物がリレーされ、使い続けられることで、モノ本来の使命が全うされると思います。それがコメ兵の創業以来、大切にしている「リレーユース」という考え方です。循環の輪を、文化のレベルまで浸透させることでリユース市場全体の価値観も変化するはずです。そのためには、新たな技術や価値を見いだす必要もあります。そのように培った考え方を日本だけではなく、グローバルにも展開していきたいですね。

Interview text_SHINGO ISOYAMA


RELATED ARTICLES