INTERVIEW ABOUT MARGIELA / CHIKASHI SUZUKI

1. 映画『マルジェラが語る“マルジェラ”』 の感想をお聞かせください。

マルタン本人が出演したことが本当に驚きました。そして彼の手の動き、捨ててしまうような何でもないものに彼の手が触れた後、美しいものに変わる瞬間、それが記録されている素晴らしさ。

2. マルタン・マルジェラの服を目にした最初の瞬間はいつ、どこでしたでしょうか? その時の感想をお聞かせください。

初めて目にしたのは、代官山のA.P.C.で扱っていたエイズTシャツだったと思います。そこにはフューチュラのTシャツもあったり、マルジェラの製品とは知らずに買った記憶があります。単純にカッコ良くて買ったものでしたが、書かれたメッセージを読んで着ることで、少し自分が変われた気がしました。パリに住んでた頃は、A.P.C.のジーンズにそのエイズTにスタンスミスで。フォトグラファーのCamille Vivierも全く同じスタイリングをしていたことから、仲良くなった思い出があります。

3. 最も印象的なマルタン・マルジェラのショーやアイテム、表現方法などについて、思い出やご意見などをお聞かせください。

毎回、革新的だけど暖かさを感じるショーでした。観光では見ない、パリを感じられる場所や人。ファッションショーを初めて総合芸術と実感したのがマルタンのものでした。また、1994年のl'hiver de l'amour bisのカバーになったバックステージの写真は、僕が写真家になりたいと思ったキッカケで、それはファッション写真であってドキュメント、ポートレート、全ての写真の要素が入ったものでした。

4. ファッション史を振り返って考えてみた時、ファッションデザイナー マルタン・マルジェラ はファッション界にどのような影響を与えたと思われますか?

あらゆる面で影響を与えているので、語弊があるかもしれませんが、個人的に「beforeマルタン」「afterマルタン」でファッション史を区切っても良いなと思います。書き切れないです(笑)。

5. マルタン・マルジェラが作る服そのものは、他のデザイナーが作る服とどのように異なり、どんな所に凄さがあったとお考えですか?

特別な何かでないものが、彼の手が入ることで特別な美しさを纏う。それを着ることで彼のフィロソフィーを纏える。有名な足袋、デニムにペンキ、ミリタリーソックス、プラスチックのショッピングバッグ、学生でも手に入る素材から見落としてしまっている美しさを気づかせてくれたことは、ストリートの素晴らしさをモードに浸透させ、モードの素晴らしさをストリートに。今のストリートとモードのミックスは彼から始まったと思います。しかし、今のものと一線を画すのはマルタンの作るものにはフィロソフィーを感じられるところです。

7. 今もまだ着用・愛用・所有しているアイテムがありましたら、詳しくお聞かせください。

メンズがない時代の1996年秋冬シーズンのbuckle coatです。二着色違いで買って、一枚はまだタグ付きです。初めてレディースのフロアで買った服で、その頃はかなり買いづらい雰囲気の中、購入した記憶があります。それでも欲しかったものなので今も大切にしています。

8. 現在、アーティストとしての活動をしていると言われているマルタン・マルジェラですが、いつかファッション界に復帰して欲しいと思われますか? 今後の彼にどのような活動を期待しますか? その理由と共にお聞かせください。

彼の作品は物理的法則から逃れ、時間や距離、人種や年齢、性別に関係なく影響を与えています。白タグのように不在であることで、より存在が強まるような存在。神様のように見えないけど存在は感じられるような存在。ですので、こちらの希望はなく、マルタンの望む活動をしてもらえれば、それが一番です。

9. マルタン・マルジェラ本人に、メッセージをお願い致します。

Je t'adore!

鈴木親

写真家
https://chikashisuzuki.net
Instagram_ @chikashisuzuki1972


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