元コレットのサラ・アンデルマンにインタビュー。

ショーを見に行くようになったのは、いつ頃からですか?また、ファッション業界に入ったきっかけを教えてください。

まだ20歳くらいのときに、サントノレ通り213番地の物件(コレットのあった場所)を初めて訪れました。当時、私はエコール・ド・ルーブルで美術史を学んでいました。
そこからはとにかく展開が速かったです。すぐにロンドン・ファッション・ウィークにショーを見に行ったのを覚えています。買い付けのために行ったのですが、Hussein ChalayanやAlexander McQueenといったデザイナーのショーに完全に夢中になりました。
パリでComme des Garçonsのショーを見たときは夢のようでした! けれど実は、ファッションショーのイベントや音楽、雰囲気が大好きなのと同じくらい、ショールームに行くのも好きです。コレクションを全部見て、実際に洋服に触れられるのがいいですね。

INTERVIEW WITH SARAH ANDELMAN

Hussein Chalayan、Alexander McQueen、Comme des Garçonsのショーはどのシーズンだったか覚えていますか? コレットのために、すぐにこれらのブランドの買い付けを始めたのでしょうか?

ショーを観に行くようになったのは1997年3月からだったと思います。はい、それらのブランドをすぐに買い付けるようになりました。

自分のために、あるいはコレットで販売するために最初に買った若手デザイナーのコレクションは何ですか? そのコレクションはまだ持っていますか? 今でも着ていますか?

一つは、若手デザイナー二人によるブランド、BLESSです。マルジェラのショーで使われていた毛の長いウィッグが付いたブラシを覚えています。全く実用性のないものですが、目にした瞬間にその美しさに感動しました。私たちの自由さ、そしてこのようなアーティスティックなヴィジョンを理解してくれるお客さんと出会いたいという、当時の希望が分かる良い例だと思います。そのBLESSのブラシは今でも持っていますね。Jeremy Scottのコレクションも、まだ彼がパリでショーをやっていた頃はたくさん持っていましたが、その後は全てパリ装飾美術館(MAD:Musée des Arts Décoratifs)に寄付してしまいました。それから、『Purple』『Self Service』『i-D』『The Face』といった雑誌は初期の頃から集めています。

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コレットではどのデザイナーが早くからよく売れましたか? 最初から人気だった理由は何だと思いますか?

Jeremy Scottはすぐに人気が出ました。彼のエネルギーと、コレクションのメッセージが理由だと思います。純粋なクリエイティヴィティに溢れていました。同じことがRaf SimonsやRodarteについてもいえます。もちろんVirgil AblohもOff-Whiteを始める前、駆け出しの頃からずっと一緒に仕事してきました。彼もすぐに注目を集め、ストリートウェアとファッションの融合が始まりましたね。

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まだ駆け出しの頃に発見したデザイナーについて教えてください。やはりそういうデザイナーは最初から才能に溢れていましたか?

先ほど挙げたデザイナーの他には、Proenza Schouler、Julien David、OAMC、Sacai、Thom Browneなどがいます。彼らは最初からヴィジョンがあって、自分がどこを目指しているのかをよく分かっていました。

ランウェイショーやショールームでファッションデザインを見るときは、まずどんなところをチェックするのでしょうか?

これまでに目にしたことのないような、自分を驚かせてくれるようなデザインだけど、同時にウェラブルなものを見るのが大好きですね。コレクション全体に意味があって、全てのものがより大きなものの一部となっているようなコレクションを見ると感動します。私たちの歴史に紐づいた明確なストーリーがあることも大切だと思いますね。

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「ウェアラブルなもの」と仰ったのが面白いなと思いました。おそらくウェアラブルなものもアンウェアラブルなものもお好きだと思うのですが、これについてもう少し教えて下さい。

主観の問題だと思いますが……、そうですね、人目を引くようなデザインだけど、それを着て問題なく地下鉄に乗れるようなもの、ということです(笑)。

ショールームでは、ブランドの取り扱いを検討する上でどんな要素を重視しますか? サンプルの試着はたくさんされる方ですか?

いいえ、ショールーム滞在時はあまり時間がないので試着はしません。サンプルはハンガーにかかった状態のまま判断していきます。理想的でないのは分かっていますが、実は私はそれがクライアントを第一に据えたアプローチだとも思っています。ショールームに試着してくれるモデルがいることもあるので、もちろんそれに越したことはないです。私にとって重要なのは、クリエイティヴィティ、ウェアラビリティ、他のブランドとは違う個性、統一性、クオリティなどのバランスを見つけることなんです。

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コレットでは全てのデザイナーのコレクションをミックスしてディスプレイされていましたよね。既に確立しているブランドと若手ブランドは分けてディスプレイすると思うのですが、そうしなかった理由は何故でしょうか?

開店した当初はハンガーラックが一つもなくて、洋服は全てマネキンに着せていたんです。なので、トータルルックだらけになる以前の頃のファッションマガジンのように、毎週、色々なブランドを自然とミックスしてマネキンのスタイリングをしていました。それにお客さんには、ブランドではなくて、アイテムそのものの魅力を感じて欲しいという思いもありましたね。

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今現在、注目されている若手デザイナーを教えてください。

Emily Bode、Pyer Moss、KidSuper、Coperniなどが大好きですね。

LVMH PRIZEにおける新人デザイナーの発掘についてお聞かせください。

LVMH PRIZEにはスカウトチームがいるのですが、彼らはあらゆる所で新人デザイナーを探していると思います。ニューヨークやロンドンから素晴らしいデザイナーが常にたくさん輩出されていることは事実なのですが、それら主要な都市以外にも注目することが大事です。エディターとバイヤーの間では、面白いデザイナーの情報は全て共有されています。既に3回のコレクションをやっていることが条件なので、例えばファッションを学んでいる学生だと早すぎます。既にビジネスを始めているデザイナーが対象になりますね。

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あなたが挙げてくださった若手デザイナーのコレクションもいつかは「アーカイヴ」になるわけですが、ここ数年のアーカイヴ現象について考えをお聞かせいただけますか。個人的にコレクションしているデザイナーやブランドはありますでしょうか?

Comme des Garçons、Junya Watanabe、TAO、Noirは集めています。それから一部のNike、グラフィックTシャツも。Original FakeのTシャツは全て、一生手元に置いておくつもりです(笑)。人にもたくさんあげてしまうのですが……。アーカイヴについていえば、特定のアイテムに付随する感情的な価値が重要なのだと思います。それぞれのアイテムは、人生の中のある特定の日の、特定の瞬間を表すものなので。私は古着やヴィンテージは一度も買ったことがありません。必ず新しいものを買って、それぞれのアイテムに自分の歴史を刻みたいと思っています。

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「アーカイヴ」というと、毎シーズン、ランウェイショーを行うデザイナーを思い浮かべますが、他に今後「アーカイヴ」として扱われるファッションジャンルはあると思いますか?

コラボレーションのアイテムは、限定ものですし、確実にそうなっていくと思いますね。

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