INTERVIEW WITH RARE BOOKS PARIS

古書を扱う謎のパリジャンの正体とは?

Instagram上でヴィンテージブックマニア達を虜にしている、謎のアカウントがある。我々は「RareBooksParis」に連絡を取り、Eメール越しにインタビュー取材を敢行。その正体は未だ明かされていない。しかし、その人物が持つヴィンテージブックへの強い情熱を確認することに成功した。

INTERVIEW WITH RARE BOOKS PARIS

「RareBooksParis」と名付けた理由を教えてください。パリを拠点にされているのでしょうか?

はい、おっしゃる通り、パリを拠点にしています。もう15年ほどになります。名前は読んで字のごとくですが、私はパリに住んでいてレアな本を売っているので、すぐにこの名前に決めました。

「RareBooksParis」とは、何者なのでしょうか? 何人いますか?

私一人だけです。

本の販売だけで生活されているのでしょうか?

いいえ、残念ながらまともな生活ができるほどの量は売れていないです。ただ、これはお金のためにやっているわけでもありません。ベースボールキャップやトートバッグを売るとか、セルアウトしたことはありません……。ですが、ファッションブランドのための指導やコンサルティング、リサーチなどはやっていて、それで生活を賄っています。

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本の収集や販売を始めたきっかけは何ですか? アートやファッションなどに惹かれるきっかけとなった最初の本があれば教えてください。

私は物心ついたときから本に興味がありました。実は何年も前にグラフィックデザインを学んでいたので、若い頃から印刷の勉強をしていたんです。高校生の時、誰かが『The Face』を持ってきたのを覚えています。それが1991年のことだったのですが、それまでに見たことのないような内容で、その時期のエディトリアルは特に目を見張るものがありましたから、今にして思えば16歳にしてそうしたスタイルの虜になってしまったのかもしれません。

他にも古い雑誌でエディトリアルが好きなものはありますか? 『The Face』以外だと、どんなファッション誌が好きですか?

好きなエディトリアルはたくさんあります。昔は、壁にも貼れるようによく二冊買っていました! 『Self Service』、ヴィンテージの『Purple』、『Doingbird』、『Made in USA』、『Dutch』、『流行通信』、『RE-magazine』などが好きです。

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最近のファッション誌についてはどう思われますか?

ファッションデザイナーと似た状況になってきている気がします。数はたくさんあるのに、本当の意味で独自の視点を持ったものが少ないように感じています。

昨今のブックアーカイヴ現象についてはどう思われますか? 特に、古い『Purple』誌は非常に高い値で取り引きされていますよね。

ヴィンテージの出版物、特にとても良質なものには、確かに大きな関心が寄せられていますね。そういったことは洋服でも起きているので、ある意味当然のように思います。デザインが良ければ、印刷物でも同じことが起きても不思議ではありません。

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ありきたりな質問かもしれませんが、ファッション系のオンラインメディアについてはどう思われますか? 『The Face』のように、それらを見てワクワクすることは今でもありますでしょうか?

ファッション系のオンラインメディアは見ていませんね。

本はどこでどのように集めていますか?

膨大な時間をかけてひたすら移動して、探しています。一年前から旅行が制限されているので、やはりパンデミック前の方がやりやすかったのですが。それでも、パリの中でも蚤の市やセーヌ川沿いのブキニスト(本を販売する露店)など、宝物を見つけられる秘密の場所がいくつかあります。また、今では本を売りたい人が直接連絡をくれることもあるので助かっています。ちなみに、本を買う場所としては、日本は私のお気に入りです。神保町だけで何日も過ごせますね。

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自分用と販売用に何冊くらい本を持っていますか?

数えたことはありませんが、数千冊はあると思います。

それらの本をどうやって保管されているのでしょうか?

私のアパートにあります。幸運なことにかなり広いので、すべて手元に保管しています。本は私にとって友人のようなものですし、こういう美しいものに囲まれているのが好きなので、この方がいいんです。私にとっては普通のことなのですが、寝室にもたくさん本を置いているので変に思う人もいますね。他の人から見ると、まるで図書館で寝ているみたいに見えるようです。

オンラインで販売している本はすべて読まれていますか? 収集は販売のためだけにされていますか、それともご自身のためにもされていますか?

はい、もちろんです! 私が本を買うのは、その本が好きか、その内容やスタイルに惹かれたか、あるいは今まで見たことのないようなものだったか、そのいずれかが理由です。私はパリで10年以上ファッションデザイナーとして働いていましたが、その間、本を見ることは常に私のリサーチプロセスの重要な一部だったので、服を作らなくなった今でもその習慣は残っています。今は主に販売用に集めていますが、気に入ったものがあれば二冊買って、一冊売れても一冊は自分用に残せるようにしています。

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どうしてこのプロジェクトにInstagramを使うことにされたのでしょうか? また、ご自身のウェブサイトを持たないのはなぜですか?

Instagramを使ったのは、最初は比較的簡単で使いやすいアプリだったので、イメージを伝えるという私のやり方にぴったりだったからです。自分のウェブサイトを持たなかったのは、私が怠け者で、ウェブサイトを維持するよりも、本を見たり探したりすることに時間を使いたかったからです。私は一人で仕事をしていますからね。

「RareBooksParis」のInstagramフィードは、非常によくキュレートされていると感じています。スキャンのトーンもどこかポエティックで、オリジナルの雑誌よりも良く見えることさえあります。どのようにして今のようなスキャンの方法にたどり着いたのでしょうか?

画像のキュレーションには細心の注意を払っています。そういう意味では、私は常にエディターのように仕事をしてきました。出版物をスキャンして、その出版物を代表するベストな画像を手早く選択することができるんです。

「Rare Clothes Paris」もあなたのアカウントですよね。フォロワーが2,000人近くいますが、まだ何も投稿されていません。今後の予定は何かあるのでしょうか? どんなものを投稿、販売されるのでしょうか?

あぁ、そのアカウントを持っていることすら忘れていました。数年前にコレクション向けのレアな服を販売する目的で作ったのですが、きちんと管理する時間がありませんでした。ありがとうございます、そのアカウントは消します。

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