sulvam Teppei Fujita Interview Vol.01

sulvam藤田哲平氏が語る、初のオンラインフォーマットでのパリコレクション発表

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Photo: Masaya Miyazaki

コロナウイルスの流行により世界各国で人や物の移動が制限され、毎年6月に行われるメンズのパリコレクションが中止となり、史上初めてデジタルフォーマットでのプレゼンテーションが行われた。
日本を代表するブランドの一つとしてパリコレクションのオフィシャルスケジュールに名を連ねるブランドsulvamのデザイナー藤田氏に先日行われたSpring Summer2021のプレゼンテーションに関して話を伺った。

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Photo: Masaya Miyazaki
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Photo: Masaya Miyazaki

Spring Summer 2021コレクション、プレゼンテーションに関して

--- まずはSpring Summer 2021のメインコレクションについてお伺いしたいのですが、コンセプトやメッセージ等コレクションを通して何か伝えたい事はありますか?

「元々シーズンによってテーマを特に設けていなくて、毎回自分の感情だけで服を作っているのですが、コンセプトという物が今シーズンあるとしたら映画とか音楽とかそういう物から得た物ではなくて、コロナだったり、Black Lives Matterの問題が起こってファッションよりも世界中の人々が何か優先すべき事だったりとか、日々の生活の中で色々な事を考え始めるきっかけになった年というか、この数ヶ月だったと思うんです。その状況下で服作りをしていたので、一言で言えるテーマというよりもメッセージの方が大きいかもしれない。服を、ファッションを通じて世界中の人々が前を向いて歩いて欲しいなというのが今シーズンの僕の中でのI番のメッセージです。例えば今回sulvam定番のギャバジンのセットアップでリバーシブルのシリーズを製作し、裏地にパールのプリントを施しメッセージを反映しました。 あと、ワンルックだけなのですが迷彩を組み込んだスタイルを作りました。理由は今この様な世の中になっていて、僕は日本で起こった 3.11の地震の時に迷彩服を着て人々を助ける自衛隊を見てその迷彩がすごく綺麗に見えたんですよ、格好良く見えて、人々を助ける物の象徴の様なくらいに思いました。だけど最近の数シーズンパリの街中歩いていてもそうだし、デモ等が多くなってきていて、迷彩服を着た人と人々がぶつかり合っていたりして、要は戦争の方の、戦う方の迷彩、本来迷彩というのはそうゆう物なのかもしれないけど、僕には綺麗に見えていたんですよね。どっちなんだろうと思って、僕はせめて迷彩も綺麗に見えた景色を表現したくてそのルックを作りました。」

--- オンラインフォーマットでのショーに関してお伺いしたくて、今回やってみて何か感じた事等ありますか?

「今まで僕らはパリに行ってコレクションを見せていたので見せられる人達がパリに来ている人達だけで、これがオンラインでの一⻫配信になったら世界中の人々に同時に見せる事が可能になる。より多くの人に見てもらえるという事だと思うので、そこはメリットなのかなと。ただ大前提として人が服を着て布が揺れていたり、人が着てこそ服が完成するという部分はあると思うので、それを直接見せるという機会が無くなったのは僕にとってはデメリットです。」

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Photo: Masaya Miyazaki

サスティナビリティ、プロダクションバックグラウンドに関して

--- 今回コレクションに使用された素材や協業した職人に関して、コレクション作成のプロダクションバックグラウンドや素材に関するこだわりをお伺いしたいです。

「毎シーズン基本的に生地は日本製の物しかほとんど使っていないのですが、正直世界を見た時に日本の生地はトップクラス。クオリティが一番良いと僕は感じているので、必然的に国産の生地を使っていますね。 プロダクションで特筆すべき事としては先シーズンから定番化したデニムです、産地としては広島と岡山の間にある児島という場所になるのですが、そこで作られている生地で、凄いんですよ。染色をする段階で藍染、インディゴ染めなので水を使うんですよね、その水はもちろん染めるので汚れる訳ですよ。だけどそれを何十年も前に自分達で濾過するシステムを導入して100%濾過してピュアな水にした上で、目の前の川に戻してあげるんですよ。これって相当コストがかかるし難しい事なんですよね。単純に自分達が住んでいる環境を汚さず後世に引き継いで行こうという精神がカルチャーレベルで存在していて、それは彼らにとって必然的な事であって、生地のクオリティも勿論なのですがそこで生まれたデニムの生地を使えばやっと理想のデニムが作れると思いデニムをスタートさせました。」

--- サステイナビリティに関して

「結構皆色々な解釈をすると思うんですよ。地球温暖化が起こるからケミカルをやめていこうよとか素材開発の上で言うサステイナビリティもあれば、無駄な物を作るのをやめようというサステイナ ビリティもあるし、あと再生繊維。ペットボトルから生まれる素材だったりコットンだったりとか、 結果できあがるとその一言で終わるんですけど、それができる工程、過程の中で本当に空気を汚していないんですか、水を汚していないんですか、と言った時にその工程の中に空気が汚れていってしまう物もあったりとかすると思うんですよ。僕が使う素材は全て土に還る素材なので、最終的に地球に還っていける素材達なんです。決して特にサスティナブルを一番に意識して使っている訳ではないのですが、毎シーズン使用するテンセルもそうで、木材由来の繊維なのでやはり地球に戻る、これが僕のサステイナビリティーだと思っています。 同時に今盛んに言われているのがレザーに関して。フェイクレザーという言葉がエコレザーという言い方に変わったりもしていますが、僕はちょっと違う意見で、フェイクレザーという物こそケミカルな物、もちろん素材を作る工程の中でピュアに作れている生地屋さんもあると思うのですがそれって結構稀な事なんですよね。レザーというのは動物の皮ですがそのレザーを作るために動物を育てている訳では全くなくて、人々が食べる為なんですよね。その余った皮がレザー製品に行き着くと僕は考えていて、だから僕はレザー自体がサスティナブルだと正直思っています、だってウールだって羊たちの毛ですよね。生地を作る上で大前提で地球とは絶対関わり合っているんですよ、ファッションって。それをいかに汚さずに守れるかと言うのは僕達の一つの目標であり課題です。ファストファッションの様な、いらなくなった服をすぐに捨てるという行為もちょっと違うかなと思っていて、なのでsulvam の服で言うと前のシーズンだから古いですよとか前のシーズンと今シーズン合わせちゃいけませんよなんていう提案の仕方は一切しておらず、どのシーズンでも好きなように合わせて好きなように着て欲しい。クオリティの良い物であれば人々はなかなか手放さないと思うので、極端な話自分から自分の子供にその服が譲られて行く、もしくは違う人の手に渡って行くという事は1番サスティナブルに繋がる行為なんじゃないかと思いますね。ゼロから新しい繊維を生み出すという事よりもある物を持続させていく、捨てない行為、無駄にしない事。日本で言う「もったいない」という言葉はサスティナブルに一番繋がる言葉ではないでしょうか。」

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Photo: Masaya Miyazaki

デザインアプローチ、今後の海外での展望に関して

--- 欧米と日本のデザイナーのデザインのアプローチの違いに関して、先程コンセプトの捉え方の話が あったと思うのですが、藤田さんは毎回ご自身でパターンを手引きされているという事でそこに対するこだわりをお聞かせ下さい。

「単純に僕自身パターンを手で引く事を重視しているという事と、あとデザイン画を書いてパタンナーに渡して服を作るというプロセスというか、トワルを作ってもらえて修正をしていくという行為よりも服のパターンそのものが僕にとってのデザイン画であって、引いている途中にちょっとカーブさせようとか服の形は頭でイメージできている訳ですよ、でも本当にそれってニュアンスなんですよね、「ここをこうした方がいいな」とか「ここにドレープを出したい」って時に自由に。パターン=デッサンみたいなイメージなんですよね。デザイン画を書く人と同じように僕はパターンをデザインだと思っているので、理想の形が頭の中にあってそれを引いて出していく。コンセプト重視の欧米のスタイルに比べるとスキルベースでの発展というイメージです。 なかなか欧米、日本問わずこうゆう事をやっているデザイナーは少ないと思いますね、まあ皆こんな面倒臭い事をやりたくないだろうしね。」

--- 今後の海外での展望をお伺いさせて下さい。

「パリに会社を作りたいです。今は日本に会社があってアトリエがあるのですが、毎シーズン僕はパリで発表をする事しか考えていないので、PITTI UOMOだったりミラノコレクションだったり以前参加させてもらったのですが、参加した上でやっぱりパリだと感じています。なのでパリという街にsulvamを根付かせたいというのがまずあります。お店も考えているのですが、まずは拠点が欲しいのでアトリエを構えたいです。僕の生活もパリと日本半々ぐらいにできるような状況を作っていければ一番良いかなと思います。」

--- 最後にコロナパンデミック後の今後の展望についてお伺いしたいです。

「単純に僕はどんな状況においても良い服を作っていきます。それを見て人々に何かを得て欲しいし感じて欲しいなっていうのはありますね。苦しく我慢して生きるのはつまらないので、どんな形であれ前を見て歩いて欲しい。ファッションがそのきっかけになれば嬉しいです。」

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Photo: Masaya Miyazaki

藤田哲平/TEPPEI FUJITA

1984年10月9日 千葉県生まれ。2003 年から 2006 年まで某セレクトショップにて販売員、バイヤーとして勤務。その後、2006 年から 2013 年まで株式会社ヨウジヤマモトにて、企画部パタンナーとして勤務。2014 年 4 月より、株式会社サルバム設立。sulvamスタート。

www.sulvam.com

sulvam Spring/Summer 2021 movie

Collection Designer : Teppei Fujita
Film and Director of Photography : Yohei Haga
Styling : Keita Izuka Hair : Kazuhiro Naka
Makeup : Mai Kodama
Photography : Masaya Miyazaki
Direction : Naohiro Tomura
Model : Lee Momoka, Shintaro Yuya

Photography_ Masaya Miyazaki (Mukta)
Interview &Text_ 1729Agency


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