Interview with RAF SIMONS ARCHIVES
RAF SIMONSから紐解く、“アーカイヴ”の精神
「RAF SIMONS ACHIVES」というメディアがある。Instagramアカウントでの初投稿は2015年1月。RAF SIMONSの過去のアイテムの全景やディテールカット、それにまつわるアートブックやファッション雑誌などのヴィジュアルまで、多方面からRAF SIMONSのクリエイションを捉え、その魅力を余すことなく紹介している。そのハイクオリティの投稿は今では700を超え、フォロワー数は約28万人、聞くと所有しているアイテムは500点に登るという。RAF SIMONSへの偏愛と尊敬に満ちたアカウントは、もはや世界中のファッション・クリエイターから注目されるまでになっている。
今回、OR NOTでは、様々なファッション関係者やクリエイターに独自にアイテムをセレクト/出品頂くという新たなプロジェクトにおいて、光栄なことに「RAF SIMONS ACHIVES」にも参加して頂けることになった。貴重なアイテムが販売されるのに合わせて、インタビューも敢行。RAF SIMONSの過去のアイテムについてはもちろん、昨今のアーカイヴの興隆からその定義にいたるまで話を伺った。
--- まずRAF SIMONSを集めるようになったきっかけについて教えてください。
2001年くらいからラフシモンズに興味を持ち始めて購入するようになり、集め始めました。
--- 全部で何点ぐらいのアイテムを所有しているのでしょうか?
常に入手と放出を繰り返していますが、現状では500点くらい所有していると思います。
--- 難しい質問だと思いますが、ベストピースを 3 つ選ぶとしたらどのアイテムでしょうか?
ベストピースと思っているものはいくつかあるのですが、全て90年代のアイテムです。ここで言及してしまうことで入手しづらくなってしまいますので、特定することはやめておきます。ただ、既に価格が高騰しているグラフィック入りのアイテムはそのベストピースの枠には含まれませんね。
--- RAF SIMONSの長いキャリアの中でも、特に気に入っているシーズン 3 つとその理由を教えてください。
特定のシーズンを挙げるのが難しいですが、90年代が最も素晴らしかったと考えています。その当時のシルエットや音楽的リファレンスなど、メンズファッション史の大きな流れを作ったのは、確実に90年代のコレクションです。
--- RAF SIMONSの魅力はどこにありますか?
一つ前の答えと重複してしまいますが、メンズファッション史それ自体を作り始めたといっても過言ではない、メンズウェアの新しい提案がなされていた90年代のコレクションはとても魅力的だったと捉えています。
--- RAF SIMONS 登場以前と、登場後でファッション業界はどのように変わったのでしょうか?
クラシックバレエにおいて、ヴァーツラフ・ニジンスキーが男性ダンサーの地位を確立したのと同様に、ラフ・シモンズはメンズウェアの地位を押し上げることに大きく貢献したと考えています。
--- ファッション業界において、なぜ“アーカイヴ”という言葉が頻繁に使われ始めたのでしょうか?
この「RAF SIMONS ARCHIVES」というアカウントがファッションにおける「アーカイヴ」という言葉を広めた一つの要因になっていることは間違いないと思っています。ただ“なぜ”かというのは分析できていませんね。
--- 昨今“アーカイヴ”という言葉が、デザイナーズヴィンテージの転売を美化するための都合の良い言葉として使用されていますが、この傾向についてはどう思われますか?
そうした傾向に対して肯定的でも否定的でもないのですが、90年代以降のものを「アーカイヴ」、それ以前のものを「ヴィンテージ」と区別するような風潮があることは事実ですし、それはそれでいいのではないでしょうか。ただ、本来の「アーカイヴ」という言葉の意味をしっかりと考えることなく、誰しもが「アーカイヴ」という言葉をむやみに乱用していることについては、不可思議な現象だと感じています。
--- ずばり“アーカイヴ”の定義とは何なのでしょうか?
特定のテーマの下に蓄積されてきたものであり、未来にとって有益なものを指すと考えます。
--- たった数シーズン前のコレクションアイテムだったとしても“アーカイヴ”と称することは出来るのでしょうか?
するべきではないですが、しているブランドをたくさん見かけます。
--- 昨今セカンダリーマーケットの拡大についてはどう思われますか?
熟考することのなされない中で生み出された新作の服よりも、過去の服に目を向ける人が多いことは嬉しいですし、正しいと考えています。
--- セカンダリーマーケットおいては、枕詞的に“名作”というワードが使用されがちです。本来、“名作”とはどのようなアイテムを指すと思われますか?そもそも“名作”とは誰がどのように決めるものなのでしょうか?
セレブリティが着用したものが“名作”であると断定されることが多い気がしています。それが間違っているとは思いませんが、個々人が判断すればいいのではないでしょうか。
--- RAF SIMONS が手がけたCalvin Klein 205W39NYCは、RAF SIMONSのアイテム同様に“アーカイヴ”となり得ると思いますか?
数十年後にはそうなっていると思います。
--- RAF SIMONS ご本人は、自身が過去に手がけたアイテムが何十倍もの値段で取引されているこの現状をどう思われているのでしょうか?
アートビジネスと同じような現象が起きていると思いますので、ご本人も決して嫌な気持ちはしていないのではないでしょうか。
--- 今 RAF SIMONS ご本人にひとつ質問をするなら何を訊きますか?
特に聞きたいことはありませんが、強いて聞くとすれば「2001年春夏コレクションを発表していたとしたら、どんなものになったか?」を聞きたいですね。
--- RAF SIMONS以外で、今蒐集している、あるいは蒐集したいと思っているブランドは何でしょうか?その理由も教えてください。
ラフシモンズ以外にももちろん集めているものはありますが、秘密です。
--- RAF SIMONSやMaison Martin Margiela、Comme des Garconsのアイテムはしばし“アートピース”と称されます。ファッション・アイテムはアートとなり得るのでしょうか?
なり得ると考えています。
--- 新型コロナウィルスはファッション業界にも大きな爪痕を残しましたが、それによって“アーカイブ”に対する価値観は変わると思いますか?
シーズン毎のコレクションを発表していくことをベースにしていたファッション業界が揺れ動いていますので、それに伴って「アーカイヴ」とカテゴライズされているゾーンの価値観も変容していくと思います。
RAF SIMONS ARCHIVES
Instagram_ @raf_simons_achives
Photo_ @raf_simons_achives
Interview & Text_ SOHEI OSHIRO