INTERVIEW WITH DUMDUM SHOWROOM
ソウル市内に潜む宝の山。ドゥムドゥムショールーム。
古着より新品の服を好むソウルでは、ヴィンテージファッションの歴史はまだ浅い。しかし、この街には過去10年間で最もエキサイティングなスポットが誕生している。Dumdum Showroomは、カルト的な人気を誇る穴場的なショップで、厳選された逸品が並んでいる。
Dumdumに入るには、衣服やアクセサリー、雑貨など、さまざまなものを取り揃えたショールームを管理している気さくなご夫婦、ウォンとダルムにアポイントを取らなければならない。JEAN PAUL GAULTIERのボディコンドレスやデヴィッド・リンチのツイン・ピークスのTシャツと並んで、MIU MIUの1999年春夏シーズンのハーネスバッグがラックに吊るされ、隣の棚にはビョークのスペースエイジのスナップバックが2つ置かれている。世界的に有名なファッションデザイナーたち、ナオミ・キャンベルやリピーターのASAP RockyがDumdumを訪れるのも不思議ではない。
ここでは、ウォンとダルムがDumdumの成り立ち、韓国のヴィンテージ事情、そして彼らのショールームを際立たせるキュレーション哲学を語ってくれた。
Dumdumの始まりについてお聞かせください。どのようにスタートしたのですか?
ウォン:6年前、私はひとりでDumdumを始めました。そして2年後、恋人でありビジネスパートナーでもあるダルムに出会いました。
ダルム:それから一緒にお店を経営するようになりました。
ウォン:3年間はホンデにショップを構えていましたが、その後、さらに東にあるショールームに移りました。
ヴィンテージを好きになったきっかけを教えてください。
ウォン:もともと消費者として古着が好きでした。中学2年生のときにカナダに移住し、カナダで育ちました。幼い頃から友人と古着屋に行き、安くて格好いい服を見つけると、特に何も考えずに買っていましたね。32歳を過ぎた頃、韓国に本帰国し、外資の会社で働いていました。韓国の会社で働くのは嫌だったのです。そして何か楽しいことをしたい、面白いことをしたい。そうして考えた結果、浮かんだアイディアがヴィンテージでした。韓国に戻ってきてから、遊びでタイに旅行に行ったのですが、そこではヴィンテージのマーケットがとても大きく、アクティブに動いているのを見て、「韓国でもこういうことをやったらいいのではないか、うまくいくのではないか」と思ったのです。そうしてこのビジネスに参入したのです。
ダルム:私はファッションデザインを勉強していました。卒業後、アメリカで1年間働いた後、韓国に戻りました。ヴィンテージに興味を持ったのは日本に行ったときで、それからずっと探していました。ゴルチエやプラダなど、デザイナーズヴィンテージがとても好き。そして、ウォンと出会ってから、さらにのめり込んでいったように思います。
二人の出会いを教えてください。
ウォン:私たちは、ホンデのお店で出会いました。ある日、共通の友人と一緒にダルムがお店に来たのです。当時は、友達に服を着せて写真を撮り、インスタグラムにアップしていました。ですが、男友達しかいなかったので、ダルムと出会ってから、何度かモデルをお願いして……という感じです(笑)。当時はデザイナーズヴィンテージを売っていたわけではなく、いわゆるトゥルー・ヴィンテージをたくさん売っていました。古いリーバイスとか、ヴィンテージのTシャツとか。デザイナーズヴィンテージを始めたきっかけは、ダルムとの出会いですね。すでに持っていた僕と彼女のコレクションでスタートさせました。
ダルム:そこから少しずつ足していき、発展していきました。
ウォン:私たちの感性がそこから混ざり合いました。そこで、デザイナーズとトゥルー・ヴィンテージを共存させていくことになったのです。
古着を探すプロセスについてお聞かせいただけますか?
ダルム:一ヶ所から調達するのではなく、毎日少しずつ探して、ピースを集めていくのです。そうしているうちに、気がついたらこんなに量が増えていました。
ウォン:例えばバンドTシャツの場合、それは有機的に起こります。自分が好きな音楽を聴いて、そのアーティストのTシャツなどのグッズを買いに行き、そのようにして多くのものを集めていっているのです。
ダルム:私たちが一緒に仕事を始めた頃、日本へリサーチ旅行をしました。日本ではブランドが多く売れる傾向にあり、ヴィンテージを見る機会も多くありましたね。その後、日本を含めた海外、さらに韓国内でも探し始めました。可能な限り、あらゆる場所を探しましたね。
ウォン:あとは、InstagramなどのSNSにあるヴィンテージのコミュニティですね。ネット上でしか知り合えないけれど、それらはリアルなコミュニティです。メッセージを送り合ったり、アイテムを交換し合ったり。仕入れもそこで行います。いろいろな方法で、自分たちが調達できる場所を片っ端から探しています。
ヴィンテージは韓国で多く見つけますか? それとも海外が多いですか?
ウォン:今はたくさんありますが、始めた頃は……。
ダルム:本当に全然なかったのです。
ウォン:当時は売る人がいなかったですし、韓国ではあまり関心を持たれていませんでした。海外でもそれほど多くはありませんでしたね。ただ、ひとつだけ素晴らしいことがありました。韓国では、古いもの、使い古したものに価値を見出さず、新しいものを買いたがる人が多く、韓国人はデザイナーズ服を好んでたくさん買います。そして、その古いシーズンの服は、時間が経つと着られなくなり、安く売られてしまうのです。そのため、当時は韓国で簡単に調達できたのです。当時はリセールのためにいいものがたくさんあって、本当にたくさん集めることができました。以前と比べると、国内でも海外でもヴィンテージへの関心が高まっていますし、韓国でも少しずつですが注目が集まってきています。
韓国の他のヴィンテージショップとDumdumの違いは何ですか?
ダルム:うちの店に来る人は、趣味嗜好が他とは少し異なりますね。
ウォン:Tシャツを探しに来る人は多いですね。他のヴィンテージショップと比べると、間違いなくうちはTシャツの種類が一番豊富です。カルチャーをベースにキュレーションしていますし、そういう視点で探しています。Dumdumでは、カルチャーに根ざしたものを見せたいんです。そこに最も力を入れています。デザイナーを集めても、やはりカルチャーがベースになっているデザイナーを探します。例えば、ある特定のカルチャーやポップカルチャーからインスピレーションを得て、それをコレクションにしたようなデザイナーです。そういうデザイナーにこそ、私たちは注目しているんです。日本のデザイナーは、好きなバンドやインスパイアされた文化人などをモチーフにすることが多いですよね。購入する前に、まずデザインを見て、次に文化的な側面から見てみる。私たちはストーリーのあるファッションを求めているんです。
ダルム:より重層的で深みのあるブランドを提案していきたいと考えています。
ウォン:洋服も素敵ならなおさらベターですよね。それに私たちは自分たちの主張を形にして見せているわけですし、それが一番大事なことなのです。
ショールーム自体について教えてください。
ウォン:できるだけきれいな状態を保つように心がけています。また毎日オープンしているショップではなく、ショールームのようなものなのです。あとはInstagramを運営しています。
ダルム:Instagramのダイレクトメッセージでアポイントを取っていただくという流れですね。
ウォン:ショールームは予約制なんです。ホンデでの最初の2年間は、毎日お店を開けていました。ですが、お客さんがランダムに入ってくることが、どこかしっくりこなくなったんです。
ダルム:ヴィンテージは、理解がないと難しいですね。なぜこういう店なのか、ということを理解してもらえないといけません。そして、そのような違いが徐々に生まれてくるのを感じました。
ウォン:そして少しずつフィルタリングを始めました。今の場所に移転して、ショールームとしてアポイントメントだけを受ける形でやっていこうと決めたんです。売り上げも上がりましたし、正解だったと思います。
ダルム:こちらも来てくださった方の好みに合わせて、事前にセレクトを用意することができました。ですから、お客様にも好評でしたし、よりパーソナルな形でアイテムをお見せすることができました。
ウォン:私たちは、お客様のためにアイテムを探すためのコミッションもいただいています。特に探しているものが定まっていれば、こちらで捜索し、受け取りに来てもらいます。
いつからそれを始めましたか?
ウォン:そういうクライアントが現れてからですね(笑)。毎日違うから、楽しいですよ。洋服を探すだけでも楽しい。予約制なので、家にいることが多く、常にリサーチしていますね。
経験上、韓国内と海外のヴィンテージ顧客はどのように違いますか?
ウォン:例えば、韓国とアメリカでは、ヴィンテージに対する考え方がまったく違います。韓国ではブランド名、そしてコンディションがとても重視されます。きれいなものがよく売れますね。ですが、海外のヴィンテージの好きの方々は、自分の好みやスタイルをしっかり持っている人が多いです。リーバイスが好きならリーバイスだけ、ナイキならナイキだけ、スポーツならジャージだけというように、よりフォーカスしてコレクションされている方が多いですね。
ダルム:韓国のお客さまや売り手は、まず自分が身につけるかどうかということを考えます。それから売買を決めていますね。でも、私たちが見てきた海外のお客さまは、たとえ着なくても、気に入ったから買ってくれます。
ウォン:考え方が違うんですよね。
ダルム:サイズが合わなくても、好きというだけで買ってくれるんです。
ウォン:その差は大きいです。
長年かけて見つけたお気に入りのアイテムはありますか?
ダルム:もちろん、売りましたよ(笑)。
ウォン:彼女のお気に入りは80年代のイッセイ・ミヤケ×アンブロのプロモジャケットです。ショーのスタッフだけに配られたそうです。
ダルム:MA-1と似たようなジャケットで、リバーシブルでした。
ウォン:実は、韓国で見つけたものなのです。4〜5年前にわずか5万ウォン(約5,000円)ほどで買いました。売り手も知らなかったようで、ただのジャケットだと思っていたようです。説明書きも「ジャケット」としか書いてありませんでした。そういった発見があるのもヴィンテージの楽しさ、面白さですね。
ダルム:ただ、今はそういう発見がほとんどないんです。
ウォン:韓国でもすごく大変になりました。探す仲間も増えましたし、海外ではさらに競争が激化しています。例えば、ヴィンテージのジョーダンなんかは、買ったものを見せびらかしたりし合っていますよね。僕はTシャツが好きなんですが、一番好きなのは映画なので、バンドTよりも映画のTシャツを探すのが好きなんです。なかなか見つからないんですが。エドワード・シザーハンズのTシャツとか、デヴィッド・リンチのヴィンテージのTシャツを持っていました。そういうものが好きでしたね。
ダルム:映画のTシャツって、本当に少ないんですよ。あまり需要がないんです。
ウォン:コンサートやツアーではバンドTがたくさん売られてますが、映画のTシャツはあまり買われないですからね。そういった事情で、ヴィンテージはあまり残っていないのです。
最近、韓国人が一番求めているものは何ですか?
ウォン:最近はやはりゴルチエですかね? 流行によって大きく変化します。モノグラムが流行ったときは、ディオールやフェンディがたくさん売れました。
ダルム:少しの間、すごく流行りましたが、今はそうでもないです。
ウォン:ゴルチエのメッシュトップも売れますし、プラダも売れます。でもトレンドは常に変化しているんです。男性はTシャツを、女性はデザイナーズを目当てに来る人が多いですね。でも、今までの韓国の女性は、古着が好きとか、着古した感じが好きというわけではありませんでした。もっときれいなものを求めていたのです。デザイナーズヴィンテージは、少しクリーンな感じがしますよね。
ダルム:洋服以上に、女性は財布やアクセサリーを目当てに来る人も多いです。
最後に「Dumdum」という名前にまつわるエピソードを教えてください。
ウォン:よく聞かれますが、特に大きな意味はないんです。特に何も考えずに名前をつけました。私はドゥムドゥムが好きなのです。韓国語で「ドゥムドゥムハダ」という言葉がありますが、どういう意味かわかりますか? シンプルだけど、頑張ってない。シンプル、簡単、自然、ドゥムドゥム。服を着ることに当てはめると、シンプルで、安っぽくなく、やり過ぎないのがドゥムドゥムなんです。
Dumdum Showroom
photography_ GUNO LEE
styling & interview text_ MONICA KIM
model_ SERIN JANG